ブランディング戦略におけるパッケージデザインとは? パッケージデザイン総合解説

Vol.4 料金の相場感をおさえる

パッケージデザインにかかる料金相場や費用に関する考え方、注意すべきポイントなどの情報についてご紹介していきたいと思います。

その道の専門家であるデザイン会社にパッケージデザインを依頼しようとした場合、一番気になるのは、果たして料金や費用といったものはどれくらいなのか。全く見当がつかないといった方も多いことでしょう。かつてはこの業界も、言い値や時価といった慣習がまかり通っていました。

しかし現在は、業界団体であるJAGDA(社・日本グラフィックデザイナー協会)では、業界の健全化を目的に「制作料金基準」というものを設定しています。

作業項目 単位 基準価格
CD(クリエイティブディレクション) 137,000円
D(デザイン) 137,000円
スケッチ 1点 16,000円
スケッチダミー 1点 31,000円
ダミー 1点 55,000円
フィニッシュ 1点 62,000円

※参照元:日本グラフィックデザイナー協会/デザイン料金表(1994年改訂版)・パッケージ・個装箱

これらはあくまで基準であり、実際には業者によって異なります。また、そのデザイン物が使用される量や頻度などの要素によって係数がかかってくるといった複雑な要素も絡んできます。

ここではその詳細説明は省略しますが、ともあれ、業界団体JAGDAは、料金基準を設定しているということは、覚えておいてください。

費用の主な内訳と構成要素

パッケージデザインの費用は、単に「デザイン代」として一括りにされるものではありません。プロジェクトの進行に伴い、さまざまな工程で専門的な費用が発生します。これらの内訳を理解することで、見積もりの内容を正確に把握し、無駄なコストを削減することにもつながります。

ここでは、パッケージデザインの費用を構成する主な要素について、一つずつ掘り下げてご説明します。

ディレクション費(制作進行管理)

パッケージデザインのプロジェクトをスムーズに進行させるためには、全体の指揮を執るディレクターの役割が不可欠です。このディレクターが担当する制作進行管理や品質管理にかかる費用がディレクション費です。

クライアントとのヒアリングを通じてコンセプトを固め、デザイナーや印刷会社、カメラマンなど、複数の関係者との連携・調整、スケジュールの管理、そして最終的なデザインの品質チェックなどが含まれます。この費用はプロジェクト全体の成功を左右する重要な要素であり、特に大規模なプロジェクトや複雑なパッケージの場合には、綿密な進行管理が求められます。

ディレクション費が不足すると、コミュニケーション不足による手戻りや納期の遅延、さらにはデザインの品質低下を招くリスクもあるため、安易に削減するべきではありません。一般的に、デザイン費用の10%から30%程度が目安とされています。

企画・プランニング費用

優れたパッケージデザインは、単に見た目が美しいだけでは生まれません。その背景には、入念な市場調査やターゲット分析、そして緻密なコンセプト立案があります。これらにかかる費用が企画・プランニング費用です。

この工程では、競合商品の分析、消費者ニーズの把握、商品の強みをどのように表現するかといった戦略的な検討が行われます。企画段階で明確なデザインの方向性が定まれば、その後のデザイン制作が円滑に進み、ブランドイメージを効果的に訴求するパッケージが完成します。

逆に、ここを怠ると、ターゲットに響かない、他社と差別化できないデザインになってしまう可能性があります。特に、ブランドコンセプトをゼロから構築する場合や、既存ブランドのリニューアルで新たな戦略を立てる場合には、この費用が重要になります。

費用は依頼する範囲によって大きく変動しますが、プロジェクト全体の成功を決定づける根幹の部分であり、投資する価値が非常に高い項目と言えます。

デザイン制作費

パッケージデザイン費用の最も中心的な部分が、デザイン制作費です。これは、デザイナーが実際にパッケージのデザイン案を作成する作業にかかる費用で、具体的には、商品の特徴を際立たせるレイアウトの考案、使用するフォントやカラーリングの選定、グラフィック要素の作成などが含まれます。

デザイナーのスキルや経験、デザインの複雑さによって費用は大きく変動します。例えば、シンプルなロゴとテキストのみのデザインと、細密なイラストや複数の写真を使用するデザインでは、後者の方が作業工数が多くなるため高額になります。

また、デザイン案の提出数や、最終案に至るまでの修正回数が含まれる範囲も、契約内容によって異なります。一般的に、経験豊富なベテランデザイナーや有名なデザイン事務所は、その実績とブランド価値に見合った高い費用を設定していますが、その分、市場での競争力を高める独創的で質の高いデザインが期待できます。

試作品・印刷費

デザインデータが完成したら、いよいよ実際のパッケージを形にする工程に移ります。この段階で発生するのが試作品(ダミー)制作費や印刷費です。

印刷費は、単に紙にデザインを印刷する費用だけでなく、紙の種類や厚み、印刷方式(オフセット印刷、デジタル印刷など)、そして数量によって大きく変動します。特に、オフセット印刷は部数が多いほど単価が安くなる傾向があります。

また、試作品(ダミー)は、デザインの立体的な見え方や使い勝手、質感などを最終確認するために欠かせないものです。本番の印刷に入る前に、この試作品をチェックすることで、デザインの不備や思わぬ問題を発見し、手戻りを防ぐことができます。

試作品の制作には、別途費用が発生するのが一般的です。これらの費用は、パッケージの仕上がりを左右する重要な項目であり、見積もり段階で細かく確認することが成功への鍵となります。

修正費用(回数、有償・無償範囲)

パッケージデザインの制作過程では、クライアントの要望やフィードバックをもとに、デザインを調整・変更する修正作業が必ず発生します。

多くの制作会社やフリーランスは、この修正作業について、契約時に無償で対応できる回数を定めています。例えば、「デザイン案提出後の修正は2回まで無料」といった取り決めが一般的です。この規定回数を超えて修正依頼を行う場合、追加の費用が発生することがあります。

この費用は、「修正費」や「追加作業費」として計上され、デザインの変更規模に応じて金額が変動します。デザインを依頼する際には、契約書や見積もり書に記載されている無償修正の範囲を事前にしっかりと確認することが重要です。無制限の修正を望む場合、はじめからその費用が組み込まれたプランを選択する必要があるため、費用全体が高くなる傾向にあります。

その他追加項目(撮影・ロゴ・コピーなど)

パッケージデザインのプロジェクトでは、デザイン制作以外にも様々な付随作業が発生することがあり、これらは追加費用として計上されます。

例えば、商品本体やイメージカットを美しく見せるための商品撮影が必要な場合は、プロのカメラマンへの依頼費用が発生します。また、パッケージに配置するキャッチコピーや商品説明文を専門のライターに依頼する場合は、コピーライティング費用が加算。パッケージ用のロゴデザインや、デザインに用いるオリジナルのイラスト制作をデザイナーに依頼する場合も、別途費用が発生します。

これらの項目は、依頼内容に含まれていないことが多いため、見積もり段階で「何が費用に含まれていて、何が追加費用になるのか」を明確に確認しておくことが重要です。これらの追加作業は、パッケージの完成度を大きく高める要素となります。

料金はなぜ変動する?費用を左右する6つの要因

パッケージデザインの費用は、依頼先やプロジェクトの内容によって大きく変動します。なぜこれほどまでに料金に幅があるのでしょうか。それは、単にデザイナーの知名度や経験だけでなく、以下に挙げるような要因が絡み合っているからです。

これらの要因を理解することで、より適切な予算計画を立て、期待通りの成果を得るための最適な依頼先を見つけることができるでしょう。

パッケージの形状やサイズ

パッケージの費用を大きく左右する要因の一つに、形状やサイズがあります。

一般的な箱型や筒型などの定型パッケージは、テンプレートを活用できるため比較的安価に抑えられます。しかし、商品の形状に合わせた変形パッケージや、複雑な構造を持つパッケージをデザインする場合には、専門的な知識と技術が必要となります。

デザイナーは、単に平面のデザインだけでなく、パッケージを展開図として設計し、その構造的な強度や組み立てやすさも考慮しなければなりません。特に、変形パッケージや特殊なサイズのパッケージは、試作品の制作や印刷時の調整にも多くの時間とコストを要するため、費用が高くなる傾向にあります。

依頼する範囲(企画・ロゴ制作の有無)

デザインを依頼する範囲によっても、費用は大きく変動します。

すでに明確なブランドコンセプトや使用するロゴが決まっている場合は、デザイン制作のみを依頼できるため、費用を抑えることが可能です。一方で、商品のコンセプトやブランドイメージの構築から相談したい、新しいロゴやキャッチコピーも作成してほしいという場合には、企画・ブランディング、ロゴ制作、コピーライティングなどが含まれるため、費用は高くなります。

費用は増えますが、これらの工程を一貫して任せることで、パッケージ全体に統一感が生まれ、より強力なブランドイメージを構築できるというメリットがあります。

デザインの複雑さ(イラストや写真の有無)

デザインの複雑さも、費用に大きく影響します。例えば、テキストとシンプルなグラフィックのみで構成されたミニマルなデザインと、描き下ろしのイラストやプロのカメラマンが撮影した写真を複数使用するデザインでは、後者の方が作業工数が大幅に増えるため、費用が高くなります。

特に、イラストや写真の作成を外部のクリエイターに依頼する場合は、その費用がデザイン費に上乗せされます。逆に、すでに手元にある既存の素材(写真やイラスト)を活用すると費用を抑えられます。

修正回数や提案案数

デザイン制作の過程で、デザイナーから提案されるデザイン案の数や、その後の修正回数も費用を左右する重要な要因です。多くの制作会社やフリーランスは、初期の提案案数を「2案まで」や「3案まで」と定めており、それ以上の提案を求める場合には追加費用が発生します。 また、デザイン案決定後の修正も、無償で対応できる回数が決められていることが一般的です。無制限の修正対応を希望する場合、デザイナーの作業工数が大幅に増えるため、最初からそのコストが織り込まれた高額なプランとなることが多いです。

印刷・加工の仕様

パッケージの見た目を大きく左右する印刷・加工の仕様も、費用を変動させる大きな要因です。

通常のカラー印刷に加えて、特殊な印刷(金や銀のインク、特色印刷など)や、表面加工(マット加工、PP加工、ニス加工など)を行うと費用は高くなります。

さらに、デザインの一部を盛り上げるエンボス加工や、光沢のあるフィルムを転写する箔押し加工などは、パッケージに高級感や特別感を付与する一方で、追加の費用が発生します。これらの加工は、商品の魅力を高めますが、予算との兼ね合いを考慮して選ぶ必要があるでしょう。

デザイナーの経験と実績

デザイナーの経験や実績、知名度も、料金に直接影響します。

駆け出しの若手デザイナーやフリーランスは、実績を積むために比較的安価な料金を設定していることがありますが、その分、コミュニケーションやクオリティにリスクが伴う場合もあります。

一方、数々の受賞歴を持つ著名なデザイナーや、有名企業との実績が豊富なデザイン事務所は、その高いスキルとブランド価値に見合った高額な費用を設定しています。彼らに依頼することで、市場で一際目を引く、強力なブランディング効果を持つパッケージデザインが期待できます。

パッケージデザインをするうえで必要な作業

これまでの内容を踏まえ、知っておきたいのはパッケージデザインというものは、単にデザイン案を作成すればいいというものではありません。主な作業には、以下のようなものがあります。

1.クリエイティブディレクション

パッケージ制作のトータルプロデュース業務です。コンセプトや方向性、戦略といったものの立案から写真素材の撮影指示、作業工程の進捗などの総合責任者。会社によっては、デザイナーが兼務する場合もあります。

2.ラフスケッチ

依頼者との打ち合わせを基に、大まかな方向性やアイデア、イメージを決めていく作業です。

3.スケッチ

ラフスケッチをベースに、細部の配色やレイアウトなどを、より本物に近い状態に詰めていく作業です。依頼者のイメージを固める上でも重要な作業です。

4.デザイン

スケッチに対するOKが出たら、実際の制作物のマスターデータとなるデザインを作成します。

5.ダミー(試作)

実際の商品と同じ形式・形状に成形した試作品を作成し、最終確認・微調整を行います。

6.フィニッシュワーク

最終的な依頼者のOKが出たら、依頼された数量分の量産を指示します。

以上のように、パッケージデザインとは、実に様々な工程を経て行われるものです。

それゆえに注意しておくべきは、安い料金を謳っているデザイン会社です。そうした手合いは、蓋を開けてみたら、上記4.のデザイン作業だけしか行わないというパターンが実は多いのです。その他の作業は、別業者に依頼せねばならず、逆に高くつくということもありえるのです。そうした点も、業者選びの際には考慮しなくてはいけません。

業者選びのポイントに関しては、「Vol.5 依頼する会社の選び方を知る」のページでまとめています。

「Vol.5 依頼する会社の選び方を知る」を見る

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