ブランディング戦略におけるパッケージデザインとは? パッケージデザイン総合解説

お菓子メーカーのリブランディング戦略

このページでは、お菓子メーカーがどのようにリブランディングに取り組んだのか、その結果、どのような変化が生じたのかについて一部ご紹介しています。

どの企業のリブランディングにも、背景には市場規模の減少や売り上げの伸び悩みなどの「課題」があります。

しかし、その取り組み方はさまざま。お菓子だけでなく、ほかのメーカーにも参考になるアイデアが満載なので、ぜひ参考にしてみてください。

リブランディング事例1 湖池屋

湖池屋HPキャプチャ
画像引用元:湖池屋公式HP(http://koikeya-pridepotato.jp/)

1953年創業の湖池屋は、ポテトチップスやカラムーチョなどのスナック菓子メーカーとして親しまれていますが、市場規模としてはカルビーに後れを取っていました。定番のポテトチップスは市場価値が下がり、低価格競争が続く状況。

そんな現状を打開するために、新社長就任の2016年10月に始まったのが、湖池屋のリブランディングプロジェクトです。総合スナックメーカーとして他社との差別化・ブランド化を目指すこのプロジェクトでは、まず、スローガンやロゴマークなどを新しくしました。

KOIKEYA PRIDE POTATO画像 引用元:湖池屋公式HP
(https://koikeya.co.jp/pridepotato_item/index.html)

なかでも、ロゴマークは2017年度グッドデザイン賞を受賞(※)。湖池屋の「湖」の文字を囲む六角形は、新しい湖池屋のコアバリューである「親しみ」「安心」「楽しさ」「本格」「健康」「社会貢献」を表しており、スッキリとしたなかにもインパクトのある企業ロゴに仕上がっています。

家紋のようなそのロゴマークは、湖池屋の老舗らしいイメージと品質にこだわる姿勢を印象づけるもので、今までの湖池屋のイメージを一新したと言えるでしょう。

そして、リブランディング後第一弾の商品「KOIKEYA PRIDE POTATO」が2017年に発売されると、発売後1カ月も経たないうちに品切れ状態に。

白地にポテトチップスの写真とロゴマーク、商品名だけという、今までのポテトチップスとは一線を画すパッケージデザインや、よく見るとダジャレになっている商品名など、話題性のある「KOIKEYA PRIDE POTATO」は、新生湖池屋を代表する商品となりました。

このように、湖池屋のリブランディングは見事成功したのです。

※参照元:GOODDESIGNAWARD(https://www.g-mark.org/award/describe/45871?token=TbjcDaaGuJ)

リブランディング事例2 ココナッツサブレ

日清HPキャプチャ
画像引用元:日清公式HP(https://www.nissin.com/jp/products/brands/sable/)

1965年に誕生したココナッツサブレは、現在でも愛されているロングセラーのビスケット菓子です。

しかし、発売当初からほぼ同じパッケージデザインであること、目新しいキャンペーンを実施してこなかったことなどが影響し、ユーザーの6割以上が50代以上となっていました。

ユーザーの高齢化が続くと売り上げの先細りは目に見えています。そこでココナッツサブレのリブランディングが開始されました。

ココナッツサブレ画像 引用元:日清公式HP
(https://www.nissin.com/jp/products/items/7729)

ちょうどココナッツサブレ発売50周年だったこともあり、若者の目に止まりやすいパッケージデザインの商品を発売することに。「おかしな(お菓子な)イメチェン」をテーマとし、人気女性アイドルグループ「私立恵比寿中学(エビ中)」とのコラボパッケージを採用したのです。

4種類のパッケージを年に4回変更して、計16種類を販売。従来のパッケージのデザインの一部と「ココナッツサブレ」のロゴをそのまま残すことで、「懐かしいココナッツサブレが何か変わっている!」と若年層にアピールすることに成功しました。

このリブランディングにより、その後の3年で売り上げが増えたのは、どの世代にも愛される味わいであることに加えて、若い世代がココナッツサブレに注目したからでしょう。

リブランディングの成功後は、メープルや焼きいも、キャラメルマキアート、抹茶、ミネラル塩など、さまざまな味のココナッツサブレを発売しています。

リブランディングにより広げたターゲット層に向けて、次々と新しい商品を打ち出していく姿勢は、「リブランディングは成功すれば終わりではない」ということを、私たちに見せてくれています。

リブランディング事例3 カンロ

カンロHPキャプチャ
画像引用元:カンロ公式HP(https://www.kanro.co.jp/)

ヒット商品のカンロ飴から取った「カンロ」を社名にした「カンロ株式会社」。大正元年の創業以来、飴を中心とした身近なお菓子を作り続けています。

グミの需要が伸びる一方で、メイン商品である飴の需要が下がり続ける現状を打開しようと考えられたのが、コーポレートアイデンティティを変更するという施策でした。

縁起缶キャンディ だるま画像 引用元:カンロ公式HP
(https://www.kanro.jp/hitotubu/product/detail/id=243)

「糖質制限」がブームになっていることが飴離れの一因であると考え、「糖は悪いものではなく、体に必要不可欠な栄養素である」ということを前面に打ち出した「糖から未来をつくる。」をコーポレートスローガンに据えたカンロ。

ブランドロゴを変更し、メイン商品の飴のデザインを追加。そして、コーポレートスローガンを添えたコーポレートアイデンティティが誕生しました。

加えて、「センスはあまり良くないが品質は良い」という自社の特徴を分析し、「ヒトツブカンロ」というセンスの良さにこだわったギフトショップを展開することで、新たな市場を開拓したのです。

リブランディング事例4 meiji THE Chocolate

meijiTHEChocolateHPキャプチャ
画像引用元:meijiTHEChocolate公式HP(https://www.meiji.co.jp/sweets/chocolate/the-chocolate/)

チョコレートを「おやつ」という概念から、ワインやコーヒーと共に嗜む「大人の嗜好品」という概念に変えることを狙いとして誕生したmeiji THE Chocolate。2014年9月より発売を開始したmeiji THE Chocolateは、馴染み深くなってきた近頃でもなお、フランスの「チョコレート・アワーズ/タブレット海外部門(2017)」で受賞実績を残しています(※)。

※参照元:株式会社 明治(https://www.meiji.co.jp/corporate/pressrelease/2018/20181019_01.html)

特徴的なカラーの正方形パッケージにゆったりした筆記体の書体と、大人らしさやチョコレートの質の高さを体現したデザインとなりました。

発売開始一周年を機にリブランディングされたmeiji THE Chocolateは、お菓子の箱といって思い浮かべるものとは異なるクラフト紙風の素材、風味に合わせたカラーバリエーション豊富なカカオ豆のシルエット、上品さ漂う幾何学模様を用いることで、イメージをアップデートしていきました。

クラシカルな大人らしさを重視したデザインから、アフリカ・中南米・アジアなどの民族風「エスニック調」へと変貌を遂げていきます。これにより大人世代だけではなく、若者も含めた幅広い年代の方に親しまれることとなったのです。

パッケージ画像 引用元:meijiTHEChocolate公式HP
(https://www.meiji.co.jp/sweets/chocolate/the-chocolate/cacaofarmer/)

リブランディング後から現在まで受け継がれるこのデザインは、各チョコレートのもつ爽やかさや深み、フルーティさ、まろやかな口当たりなど味をイメージした模様とカラーで、味わいのもつイメージを可視化しています。

見た人の印象に残るこのデザインはSNSでも話題となり、これまでのチョコレートの2倍近い価格にもかかわらず、販売計画の2倍以上のペースで売れているそうです。チョコレートのみならず、キーホルダーやiPhoneケースなどグッズの面でも、meiji THE Chocolateのモチーフとなっているカカオのデザインは人気があります。

質の高さはもちろんのこと、リブランディングによる見た目の変化が、商品の売り上げに大きく影響していることを、meiji THE Chocolateの事例は私たちに再認識させてくれるのではないでしょうか。

リブランディング事例5 フランセ

フランセHPキャプチャ
画像引用元:フランセ公式HP(http://www.francais.jp/brand/l)

1957年に渋谷で創業した洋菓子店から始まったフランセは、その拠点を1997年から横浜に移し、「横濱フランセ」として地元を中心に愛される存在として育まれてきました。その後2016年にシュクレイにより子会社化・吸収合併されたことを機に、フランセのリブランディングが始まったのです。

当初50〜60代が中心だった顧客層から、今後を見据えて若い世代も取り込んでいくため、フランセはブランドイメージの刷新を図ります。半年かけて行ったリブランディングでは、対象商品を何にするかを決めるところから始まり、フレーバーや形状、ビジュアルイメージなど、旧ブランドへのリスペクトを念頭に置きつつ、お菓子のコンセプトを考え抜いていきました。

商品は圧倒的な売上を誇っていたミルフィーユへ絞り、またお菓子の始まりである「果実」と「木の実」にフォーカスした上で、果実を楽しむ「いちご」「れもん」、木の実を楽しむ「ピスタチオ」「ジャンドゥーヤ」を定番に据えることへ決定。さらに女性の小さな口でも食べやすいように形状を細長い形へと変え、パッケージデザインも「果実と木の実をたのしむ洋菓子ブランド」を表現したインパクトのあるものへと大胆に変更していきます。

フランセ商品 引用元:フランセ公式HP
(http://www.francais.jp/sweets/)

リニューアル直後は店長や長年購入していた顧客から反対の声が多く上がり、苦境の時期が続きました。それでもリブランディングへの自信やこれまでフランセを知らなかった顧客からの評判のよさなどからうまくいくと信じ耐え抜いた結果、試食販売を通した認知度の向上なども通じて、フランセはリブランディングの成功を果たしたのです。

人々に認知してもらうために地道に続けていくことがリブランディングには大切だと、フランセの事例は気づかせてくれるのではないでしょうか。

リブランディングは視覚に訴えることが大切

これまでの事例から、リブランディングを成功させるためには、課題の分析はもちろんのこと、目に見える変化で視覚に訴えることが重要だとわかります。まずはユーザーの目に止まること。そのために企業ロゴやコーポレートアイデンティティを変更して訴えかけることが必要なのですね。

そして、もうひとつ大切なのは、時代の流れに押し流されたり逆らったりするのではなく、流れに沿うようにリブランディングを実施するということ。それが、企業の真摯な姿勢を示すことにもつながります。

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[特集]老舗企業を輝かせるリブランディング