ブランディング戦略におけるパッケージデザインとは? パッケージデザイン総合解説
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パッケージテストとは?どんなメリット・デメリットがある?

パッケージテストとは

パッケージテストとは、商品の「外見」や「外装デザイン(形や配色、キャッチコピーなど)」がお客さま(消費者)にどんな印象を与え、購買意欲を引き出すかどうかを調べるための市場調査です。

いくら中身の品質が優れていても、パッケージが魅力的でなかったり、何を伝えたいのかが分かりにくかったりすると、お客さまが手に取らないまま終わってしまうこともあります。そこで、「商品発売前」や「リニューアル前」に実施するのがパッケージテストです。

たとえば、味や機能がとても良い商品であっても、真っ黒な無地パッケージに商品名が小さく書かれているだけだと、なかなか注目されません。「どんな色がより目を引くのか」「文字の大きさや書体はどうすれば購入したくなるか」などを、データや消費者の声によって把握し、最終的なデザイン決定につなげることができます。

パッケージテストが重要な理由とは

購買行動における第一印象

店頭では多数の商品が同時に並びます。最初の印象で「あれ、これ良さそう」と目を留めてもらうかどうかが勝負になります。多くの場合、見た目(パッケージ)が購買意欲の大きな決め手になりやすいです。

情報の伝達

パッケージには商品名や用途、原材料などの基本情報はもちろん、ブランドが提供したい世界観やコンセプトを伝える役割もあります。高級感をアピールしたいのか、親しみやすさを狙うのか、それを間違えると購買機会を逃してしまいます。

ブランド資産の形成

パッケージは商品そのもののイメージと直結しており、長期的に愛される商品では、デザインがブランドイメージを支えている面があります。中身と外観がうまく調和してこそ、長く選ばれる理由になるのです。

パッケージテストの基本的な考え方

絶対評価と相対評価

まずはパッケージ単体で「好きか嫌いか」「分かりやすいかどうか」などを問う「絶対評価」を行います。そのうえで複数の案(A案、B案、C案など)を比較する「相対評価」も併せて実施すると、どのデザインが総合的に魅力的か判断しやすくなります。

情報漏洩への注意

新商品のデザインを事前にテストする場合、まだ世に出ていない情報を取り扱うため、モニターへの秘密保持契約や撮影禁止などの配慮が欠かせません。ライバル企業に漏れると大きな損失を招くリスクがあります。

パッケージと中身の両方が大切

パッケージテストは外装が主役とはいえ、やはり商品そのものの質が伴っていなければリピート購入につながりにくいです。見た目が最高でも、中身が期待はずれだと消費者の評価はすぐに落ちてしまいます。

パッケージテストの代表的な手法とメリット・デメリット

パッケージテストをどのように行うか、代表的な方法について解説します。それぞれの利点と注意点も整理していきましょう。

手法1. 会場調査(Central Location Test:CLT)

モニター(調査対象者)を専用の会場に集め、実際のパッケージ(またはモックアップ)を見てもらいながらアンケートやインタビューを行う方法です。実際に手に取る体験ができるため、リアルな反応を得やすいのが特徴です。

メリット

  • 実物で評価できる:ネット画像ではわからない質感やサイズ、手触りなどを確認してもらえます。
  • その場で質問調整可能:モニターの反応を見ながら、追加質問やデザインの差し替えもできます。
  • 秘密保持がしやすい:会場内で携帯やカメラの使用を制限できるため、新商品の情報が外部に漏れにくくなります。

デメリット

  • コストが高い:会場の手配やスタッフの人件費などがかかり、大規模に実施するほど費用も膨らみます。
  • サンプル数が限られやすい:一度に多くの人数を集めづらいため、サンプル数を増やしにくいです。
  • 地域的偏り:都市部で行う場合、地方の消費者の意見を拾いにくいケースがあります。

手法2. インターネットリサーチ(オンライン調査)

パッケージ案の画像や動画をオンラインで提示し、モニターにアンケート回答してもらう方法です。近年、Webの普及に伴い主流になりつつある調査手法でもあります。

メリット

  • 低コスト・短期間:全国から回答を集めやすく、会場費用が不要なので比較的安価ですみます。
  • 大規模サンプルが得られる:数百~数千人規模の回答を短期間で回収しやすいです。
  • スクリーニングが容易:性別・年齢・地域などで対象者を絞り込めます。

デメリット

  • 実物の評価が困難:触り心地や立体感などは画面越しでは分かりにくいです。
  • 情報漏洩リスク:画像キャプチャなどで拡散される可能性があります。秘密保持契約を結ぶモニターを活用するなど対策が必要です。
  • 一部の年齢層には不向き:高齢者の方など、PC・スマホ操作が得意でない場合には回答を得にくいです。

手法3. グループインタビュー(座談会方式)

同じ属性の参加者(例:20代女性、既婚者など)を数名集め、座談会形式で話し合ってもらう定性調査の手法です。商品サンプルやパッケージ案を見てもらいながら率直な意見を出してもらうことが目的となります。

メリット

  • 深い洞察が得やすい:数値では把握しづらい心理的な要因や、感性的な好みなどを聞き出せます。
  • リアルタイムに質問を深掘りできる:参加者の反応によって、モデレーターがその場で追加質問を投げかけることができます。
  • 参加者同士の相乗効果:「それ、自分も思いました」「実はこういう経験がある」など、グループの会話から新しい発見が生まれます。

デメリット

  • バイアスリスク:発言力の強い人に話題が偏ったり、周りが意見を合わせてしまう恐れがあります。
  • 時間とスキルが必要:モデレーターのファシリテーションが調査の質を左右するため、準備も手間もそれなりにかかります。
  • サンプル数が少ない:定性的な調査なので、一般化に必要な大規模サンプルは得られにくいです。

手法4. AIを活用したパッケージ調査

近年では、AI(人工知能)の力を借りたパッケージ評価が注目されています。画像をアップロードするだけで「どの部分に視線が集まるか」をシミュレートしたり、脳活動をモデル化して好感度やクリック率を予測する仕組みがあります。

メリット

  • 一度に多くの案を評価可能:人力では時間のかかる大量案を短時間で絞り込めます。
  • コストの削減:アンケート前にAIで絞り込むことで、調査全体の費用を抑えられるケースがあります。
  • 客観的に数値化できる:直感的な反応や視線の傾向を客観データとして把握しやすいです。

デメリット

  • 理由の深掘りが難しい:「なぜその部分に注目が集まったのか」など、心理的要因までは十分にわからないこともあります。
  • モデルやデータ次第:十分に学習されたAIでなければ精度が低くなる可能性があります。
  • 質感などの評価は未完成な面も:立体構造や触り心地を評価するには限界がある場合があります。

手法の選び方のコツ

  • 会場調査:コストはかかりますが、実物評価の信頼性が高い
  • ネットリサーチ:コストが低めで大規模サンプルを取りやすいが、質感評価は難しい
  • グループインタビュー:心理的・定性的な深い意見を得やすいが、大規模には不向き
  • AI活用:高速で客観的なスクリーニングができる一方、感情や心理の理由まで把握するには補足が必要

これらを単独で使うだけでなく、「組み合わせ」て行うことで、より高い精度と納得感のある調査ができます。次の第三章では、調査を実際に進める際のフローと、各ステップでの注意点について紹介します。

パッケージテストの流れと実践ポイントとは?

ここからは、パッケージテストを行う際のフローを一つひとつ説明しながら、実際の現場で役立つ注意点をまとめます。

1. 調査企画

(1) 目的・目標の明確化

まず「何のためにパッケージテストをするのか」をはっきりさせましょう。

  • 新商品の複数デザインのうち、どれが最適かを決めたい
  • 既存品リニューアル効果を測りたい
  • 競合と比べてどんな強みがあるか把握したい

など、調査の目的が明確になると、何を指標にするか(例:購入意向、好感度、ブランド合致度)も具体的に設定しやすくなります。そのうえで、「目標(アクションスタンダード)」を明確にしておくと、デザイン採用の最終判断がスムーズです。

(2) 仮説の設定

社内で「このデザインなら若年層にウケるはず」とか「高級感を求める顧客にはこちらが良いかも」など、ある程度の仮説を立てましょう。テスト結果を比較することで、「想定通り」なのか、「想定と全然違う」かを見極め、より深い知見が得られます。

2. 調査方法の選定・設計

(1) 手法を選ぶ

先ほどの章で紹介した会場調査、ネットリサーチ、グループインタビュー、AI活用などから、商品やターゲット層、予算や期間に合ったものを選択します。ときには複数手法を組み合わせることで、より多角的に評価できます。

(2) 調査票の作成

アンケートを作成する際は、「絶対評価(単体での評価)」と「相対評価(他の案や競合との比較評価)」の両方を取り入れるのが望ましいです。

たとえば、個別で「A案は購入したいと思うか」を聞いたうえで、「A案・B案・C案の中で、もっとも魅力を感じるのはどれか」を聞くことで、単独時の好印象と比較時の好印象のギャップを測ることができます。デザイン要素を細分化し「配色」「フォント」「素材」などをそれぞれ評価してもらうと、改善点が特定しやすくなります。

3. スクリーニング調査

本調査の前に、ターゲットをしっかり絞り込むためのスクリーニング調査を行うと効果的です。「最近3か月以内に◯◯カテゴリーを購入した人」「小さなお子さんがいる家庭」などの条件に合った人だけを抽出することで、本調査のデータの精度を高められます。

4. 実査(会場調査・ネットリサーチ・グループインタビューなど)

  • 会場調査:現物や棚に並べた状態を模擬して、手に取るかどうか、どの商品に興味を示すかを観察しながらアンケートを実施します。
  • ネットリサーチ:画像や動画を見せて、質問に回答してもらいます。短期間で全国規模のサンプルを集めやすいです。
  • グループインタビュー:座談会形式でじっくり意見を交わしてもらい、回答の背景や心理面を深掘りします。

5. 集計・分析

(1) 単純集計

「A案を好む人は◯%、B案を好む人は◯%」というように、質問ごとに全体傾向を把握します。アンケート調査では、これを「GT表」と呼ぶこともあります。

(2) クロス集計

年代や家族構成などを掛け合わせ、どのセグメントがどのパッケージを選びやすいかを細かく分析します。たとえば「30代女性で子どもがいる層はA案を好む傾向が強い」など、より具体的な特徴を見出すことができます。

(3) 定性分析(自由回答・発言内容)

アンケートの自由記述欄やグループインタビューの発言録などを分析し、なぜ好き・嫌いと感じるのか、どこが魅力と感じられているのかを深掘りします。数字だけではわからない気づきが得られる場合があります。

6. レポート作成・施策への落とし込み

最後に集計や分析結果をまとめ、次のアクションへ活かします。

  • A案を採用するが、色味をもう少し明るめに改良する
  • B案は特定の年代層で支持されないので方向転換する
  • C案は支持率が低いが一部コア層に響いているので限定商品として展開

といった形で、パッケージテストを通じて得られた知見を具体的な施策へと反映し、より売れる・愛される商品づくりにつなげていきます。

まとめ

パッケージテストを適切に実施することで、消費者に響くデザインを選び抜き、商品の魅力を最大限に引き出すことが可能です。しかし、調査手法の選定やデータ分析には専門的な知識と経験が求められるため、自社だけでの対応が難しい場合は、パッケージデザイン会社に相談するのも有効な選択肢です。

プロの視点を取り入れることで、ターゲット層に最適なデザインの提案を受けられるだけでなく、ブランディングや市場競争力の向上にもつながります。ぜひ専門家の力を活用し、より魅力的なパッケージデザインを実現していきましょう。