このページでは、酒造メーカーのリブランディングの取り組みやそのサポートを行っている企業についての一例をご紹介しています。リブランディングとは、その名の通り、新しくブランディングを行うこと。名の知れた老舗酒造メーカーは、これまでの商品だけでなく、若年層をはじめとする次世代へと向けた取り組みを積極的に行っています。酒造メーカーはもちろん、他業種にも参考になる取り組みなので、興味がある人は参考にしてみて下さい。
画像引用元:田苑酒造公式HP(https://www.denen-shuzo.co.jp/)
田苑酒造で行われたリブランディングの1つが2018年に開発した樽貯蔵芋焼酎「エンヴェレシーダ」です。2000年から開発に取り組み、完成までに要した年月は18年。どのようにしてリブランディングを行っていったのか見ていきましょう。
1985年に樽貯蔵の麦焼酎づくりに成功し、発売を開始した田苑酒造。ですが、この焼酎の生みの親、塚田定清氏はこの焼酎に100%満足しているとは言えませんでした。そこで新たに考案したのが、樽貯蔵による芋焼酎の開発。樽貯蔵麦焼酎づくりのノウハウと技術があれば、そこまで苦労するとは思っていなかったそうですが、はじめてみると苦難の連続。自分たちが思い描く芋焼酎とは程遠いものばかりでした。
大きな転換期となったのが、2006年。芋焼酎の原料として有名なサツマイモ品種「黄金千貫」を使用するのにこだわるのをやめたのです。このことがきっかけとなり、試験を繰り返すことで少しずつ前に進んでいることを実感できたそうです。もちろん、麦焼酎づくりで培ったノウハウも活かされています。その1つが「音楽仕込み」。ベートーヴェンやモーツァルトといったクラシックの名曲を聴かせることにより発酵を促すというもので、他にはなかった発想の独自技術です。
その結果、生まれたエンヴェレシーダは、3年以上、貯蔵した原酒を100%使用した贅沢な一品となったのです。
画像引用元:菊水酒造公式HP(https://www.kikusui-sake.com/home/jp/)
菊水酒造では、30代を中心とした若い世代に日本酒の美味しさを知ってもらおうと様々なリブランディングを行っています。その1つがパッケージへのこだわりです。
菊水酒造の人気ブランド、おしゃれなスタイルボトルで日本酒を味わえる「OUR日本酒」。OURは、「おしゃれ」「美味い」「リーズナブル」の頭文字をつなぎ合わせたものです。
1つ目の「おしゃれ」に関する取り組みは、ワインボトルの再利用です。若い人たちに人気のワインの入っていたボトル容器は、そのほとんどが廃棄されてしまいます。菊水酒造は、そこに目を付けてワインボトルをリユースする取り組みを実施。あえて凝った装飾などはせずシンプルにラベルを付けただけのスタイリッシュな雰囲気がカジュアルなテーブルにもマッチすると評判です。
2つ目の「美味い」へのこだわりは、飲みやすいすっきりとした美味さの実現です。丁寧に醸した本醸造の日本酒は、すっきりとした口当たりの中にも甘みが感じられる一品。和食だけでなく、洋食や中華など料理を選びません。
3つ目の「リーズナブル」では、デイリーでカジュアルな日本酒を目指し、お値打ち価格での販売を実現。リーズナブルな価格で本物の地酒の美味しさを味わうことができます。
画像引用元:白鶴酒造公式HP(https://www.hakutsuru.co.jp/maru/)
2015年に長年守り続けてきたデザインをリニューアルした「白鶴まる」。デザインの細部を見直すことによって、これまで白鶴まるを愛し続けてきたお客様にも引き続き支持していただきながら、新しいファンを増やすことを目指しました。
白鶴まるのイメージカラーは鮮やかな赤。このイメージカラーを踏襲しながらも力強く描かれた白い丸は、これまでの丸と比較するとより洗練されたイメージに。新たな白鶴まるの象徴が生まれました。
また、「まる」の墨ロゴについては、白で描かれた丸から続く白い縁で繋げています。このことによって、白鶴まるのロゴとして一体感のある、見やすいデザインとなりました。さらに、正面の上部では黄色いリボンが軽やかに舞っているイメージを受けますが、白鶴まるのセールスポイントを伝えるのに一役買っているとともに、このパッケージを見たお客さまに直感的に美味しさを伝えられるアイコンとなっており、店頭で目を引くことができるデザインとなっています。
老舗の酒造メーカーが近年になって売り上げが伸び悩み、リブランディングに挑戦するケースも珍しくありません。ところがいきなりリブランディングをしようとしてもなかなかうまくいかないことが多いため、最近ではリブランディングをサポートする会社も増えてきています。その会社の1つが、企画会社「ミニラクリエイティブ」。前項までに紹介した田苑酒造や菊水酒造のサポートを行っていることでも有名です。
酒造メーカーに限らず、有名ブランドを抱える老舗メーカーは会社ごとに様々な悩みを抱えていますが、中には共通する悩みというのもあります。例えば、かつて広く愛されたブランドや商品が勢いを失っているので若年層向けに新ブランドを立ち上げたがうまくいかない、老舗であるが故に、立ち上げ当初のスタッフが入れ替わり今のスタッフがブランドのコンセプトをしっかりと把握できていない、見た目のビジュアルやカッコよさに気を取られ、商品のコンセプトからかけ離れてしまっているなど。
ミニラクリエイティブは、20年以上の実績があるので、このような悩みを解決するノウハウや技術を持っています。得意とするパッケージデザインを元にこれらの課題解決に取り組んでいます。
![]() 引用元:ミニラクリエイティブ公式HP <http://www.minira.co.jp/> |
会社名 | 株式会社ミニラクリエイティブ |
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設立 | 1996年 | |
所在地 | 東京都港区南青山6-12-3 南青山ユニハイツ903 |
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加盟団体 | 日本パッケージデザイン協会 |
1996年に立ち上げられたブラビス・インターナショナルは企業や製品のブランディングを手がけている企業。東京本社に加えてソウルや上海、ニューヨーク、ローザンヌ、ブエノスアイレスなどに支社を展開しています。
同社では「どんなに素晴らしい企業ロゴや企業ブランドを開発しても、消費者との接点で訴求され機能しないと、企業ブランドは広く伝わらない」という創業者の思いから、企業と消費者をつなげる商品パッケージや商品ブランディングを重視してきたブラビス。同社の特徴は、戦略やコンセプト開発と、クリエイティブデザイン(ロゴやパッケージなど)を同時並行で行うという点。基本的には1案件に対して10人のブランドコンサルタントに加えて、40名のデザイナーが参加することによってコンセプトやネーミング、デザインの開発を手がけています。
消費者から長年愛されている商品パッケージや企業ロゴに関する実績も多数。アジアでナンバー1のブランディングエージェンシーを目指している企業です。
![]() 引用元:ブラビス公式HP <https://www.bravis.com/> |
会社名 | 株式会社ブラビス・インターナショナル |
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設立 | 1996年 | |
所在地 | 東京都渋谷区桜丘町10-10 | |
加盟団体 | 日本パッケージデザイン協会 |
こちらの記事では、酒造メーカーにおけるリブランディングの事例をご紹介してきました。近年、さまざまな老舗の酒造においてもリブランディングが行われています。すでに酒蔵として知名度とブランドを確立している企業でも、近年の時代の変化と市場の変化への対応を目的としてリブランディングに取り組むところもあります。
酒造メーカーでリブランディングを行う上では、まずはブランドの個性や魅力について考える点が大きなポイントとなってきます。ブランドが現状どのような状況なのか、そしてどのような個性や魅力を際立たせていけばいいのかを考えることにより、消費者がそのお酒に対して愛着を持ってくれるため、顧客ロイヤリティの向上が期待できるといえるでしょう。
また、リブランディングを行う上では「なぜリブランディングを行うのか」という目的を明らかにすることも大切です。こちらの記事でご紹介した事例においても、「新しいファンを増やしたい」「若い世代に日本酒の美味しさを味わってもらいたい」などさまざまな目的からリブランディングが行われています。
自社のブランドの魅力を伝えるにはどのようなリブランディングを行っていけば良いのか、さまざまな事例を参考にしながら検討してみてください。