このページでは、過去のリブランディング失敗事例をベースに、どのようなリブランディング施策を打つべきかについて掘り下げていきます。
デニムやキャップ、アメリカンカジュアルなどを数多く取り扱っているアメリカを代表するアパレルメーカーの「GAP」。国内のカジュアルメーカーの大手、ユニクロとも比較されるなど日本でも馴染み深いブランドの1つとして知られ、名前を聞いただけで四角いブルー地に白抜きされたロゴを頭に浮かべる人も多いのではないでしょうか?
そのGAPでは、進化し続けるブランドであることをPRするためにリブランディングすることを決意。これまで20年以上、使用してきたロゴのリニューアルを行ったのです。新たなロゴは、マイクロソフトやトヨタ、無印良品、オリンパス、エビアンなどが使用しているヘルベチカと呼ばれるタイプ。簡素で落ち着いた書体でありながら説得力に富む力強さが特長で、これまでメインだったブルーのグラデーションは、右隅に小さく配置されたのです。
そうそうたる大企業が使用している「勝ち組のフォント」とも言える新デザインのロゴだったのですが、なんと、たったの2日で元のものに戻すことが決まってしまいました。その理由は、ネット上で批判が殺到したからです。偽の公式アカウントが登場したり、新たなロゴをからかうようないたずらが横行しました。その結果、GAPはこれまで使用していたロゴに戻すことを発表。リブランディングでブランド価値を高めるどころか、SNSでの評判に振り回されてしまう、信念のない企業というレッテルを貼られてしまいました。
ネット上での批判をスルーしたり、大幅な変更ではなければこのような事態を招くことはなかったでしょう。対照的に、グーグルやソニー、アマゾンのような名だたる大企業がロゴを変更する際は、消費者に同じブランドであることを認識してもらうためマイナーチェンジを行ってきました。信念を持たずに行ったリブランディングはこのような結果を生みかねないので注意が必要です。
GAPのリブランディング失敗に並んでロゴ変更の失敗例として有名なのが、アメリカに拠点を構えるジュースブランドのトロピカーナです。2009年にリブランディングの1つとして、ロゴと商品パッケージの変更を行い、結局、元に戻しました。
食品に使用されるパッケージデザインは他の商品よりもかなり重要。商品そのものが看板としての役割を持っていることに加え、そのデザインを見て顧客にその場で訴えかけなければならないからです。つまり、パッケージデザインの効果が売り上げという形でそのまま現れてしまうということになります。例えば、日本の菓子メーカーの場合だと、パッケージデザインを変えることで売り上げが10%以上、アップしなければそのデザイナーの評判はガタ落ちになるそうです。
トロピカーナがリブランディングによって採用したパッケージデザインは、欧文には不向きな縦向きの表記。しかも全体的に文字が小さく読みにくくなってしまっています。また、柑橘にストローを刺している特徴的なイラストもグラスに入ったジュースに変更されてしまい、みずみずしさやフレッシュさが全く感じられないものになってしまいました。もちろん、会社には多数のクレームが寄せられ、デザインを元に戻すのはもちろん、20億円以上の負債を抱える結果となってしまいました。
バーガーキングのメイン商品と言えばもちろん、ハンバーガー。ブランド名がバンズに挟まれている特徴的なロゴで有名です。このバーガーキングでは、ユーモアを交えた話題づくりとしてブランド名を「フライズキング」に変更することを発表し、イメージ画像もフライドポテトに変更しました。ところが、消費者はジョークなのか本当なのかが理解できず、困惑してしまったそう。話題は失敗に終わってしまいました。
「おしゃれが好きな30代男性」や「健康食品に興味がある主婦」などターゲットを具体的にイメージできていないとリブランディングは失敗に終わってしまうことが多いようです。性別や年齢、職業、性格、ライフスタイルにいたるまで、事細かにターゲットを絞ることが需要です。
ターゲットが定まっていても企業本位の一歩的なリブランディングも失敗しやすいので注意が必要。顧客のニーズに合っていなければ効果は期待できません。消費者目線に立ってニーズを踏まえたリブランディングを行うようにしましょう。
太っている人限定や小食の人限定といった感じでリブランディングを行うと、ターゲットから外れてしまっている人から反感を買う恐れがあります。この結果、悪評が広まってしまうとターゲットだった人たちも嫌悪感を抱き、離れていってしまうかもしれません。それが本意ではないことも考えられるので、リブランディングを行う時には、その表現方法には注意が必要です。
リブランディングを行う際に、企業が自社ブランドを客観的に見ることができていない場合、成功のチャンスは大きく減少します。自社のブランドを過大評価し、消費者の視点やニーズを無視してしまうと、現実とのギャップが生まれます。このようなギャップが原因で、ターゲットとする市場や顧客層からの反応が予想と大きく異なり、リブランディングが失敗に終わることが少なくありません。
特に、内部からの視点だけでブランドの強みや弱みを判断することは非常に危険です。消費者や第三者の意見を取り入れることで、より客観的でバランスの取れたリブランディング戦略を立てることが可能となります。リブランディングは、自己満足ではなく、あくまで市場や顧客に合わせることが求められます。
リブランディングが失敗するもう一つの原因として、自社ブランドの課題を正確に把握できていない点が挙げられます。課題を理解していなければ、適切な対応策を講じることができず、結果としてリブランディングの効果が半減してしまいます。
例えば、消費者に対するブランドイメージが悪い場合、単にロゴやスローガンを変更するだけでは不十分です。根本的な原因を探り、それに対する具体的な解決策を見つけることが重要です。このプロセスを怠ると、表面的なリブランディングに終始し、消費者の期待に応えられません。その結果、ブランド価値がさらに低下するリスクがあります。
長年にわたり消費者に愛されてきたブランドの特徴や強みを軽視し、変更してしまうことはリブランディングの大きなリスクです。企業はしばしば、ブランドを刷新する際に過去の成功要因を無視しがちです。しかし、消費者がそのブランドに対して抱く信頼感や愛着は、特定の要素に強く影響を受けるもの。これらを変更することにより、既存の顧客層を失う可能性があります。
特に、ロゴやカラーなどの視覚的な要素は、消費者にとってブランドを識別する重要なシンボルであり、それを変更することはブランドのアイデンティティを大きく損なう危険性があります。リブランディングを行う際には、これまでの成功要因を尊重しつつ、新しい要素を慎重に取り入れる必要があります。
リブランディングの成功には、ブランドコンセプトの明確化が欠かせません。もし、ブランドコンセプトがあいまいなままでリブランディングを進めてしまうと、消費者に対して何を伝えたいのかが不明確になり、結果としてブランドの認知度や信頼性が低下する可能性があります。コンセプトが不明確なブランドは、消費者の心に響かず、競合との差別化も難しくなる原因にもなるものです。
また、社内での共通認識が取れていない場合も、リブランディングの方向性がぶれやすくなります。したがって、リブランディングの第一歩として、ブランドが何を目指しているのか、その核となるコンセプトを明確にすることが重要です。これにより、ブランドの一貫性を保ち、消費者に強いメッセージを届けることができるでしょう。
リブランディングの成功は、選択する手法が適切かどうかに大きく依存します。手法が適していないと、たとえ優れたブランドコンセプトがあったとしても、効果的に伝わらず、消費者の心に響かない結果となります。例えば、デジタルマーケティングが主要な手段となっている時代において、従来の紙媒体やテレビCMだけに頼ったリブランディングは効果を発揮しづらいでしょう。
ターゲットとする市場や顧客層に合った手法を選ばないと、リブランディングの効果が低減します。リブランディングを成功させるためには、最新のトレンドや消費者の動向を把握し、それに適した手法を選定することが不可欠です。また、実施後の効果測定を行い、必要に応じて戦略を修正する柔軟性も求められます。
リブランディングは、企業が成長し続けるために必要な戦略の一つです。しかし、どのタイミングでリブランディングを行うべきかを見極めることは非常に重要です。適切なタイミングでリブランディングを実施することで、ブランド価値を高め、競争力を維持することができます。以下では、リブランディングが必要となる主なタイミングについて解説します。
経営者が変わるタイミングは、リブランディングを考えるべき重要な時期です。新たな経営者が就任すると、企業のビジョンや目標、経営戦略が変わることが多く、それに伴いブランドの方向性を見直す必要が生じます。
前任者の経営方針が古くなっている場合や、新しいリーダーシップの下で企業の成長を促進したい場合には、リブランディングを通じて新たなスタートを切ることが効果的です。また、経営者交代により、企業文化や価値観が変化することも多いため、その変化を反映したブランドイメージを再構築することが求められます。
事業内容の変更や新たなビジネス分野への進出は、リブランディングが必要となるもう一つの重要なタイミングです。例えば、製品ラインの拡大や新サービスの導入、または業界のトレンドに合わせた事業再編など、事業内容が大きく変わる場合には、それに伴ってブランドも見直す必要があります。
古いブランドイメージのままでは、新しい事業に対する認知が低く、消費者に対して適切なメッセージを伝えることができません。リブランディングを通じて、新たな事業展開に適したブランドイメージを構築し、ターゲットとなる市場や顧客層に効果的にアピールすることが重要です。
企業の顧客層が変化した場合も、リブランディングを検討するべきタイミングです。時代の流れや市場の変化によって、消費者のニーズや価値観が変わることは避けられません。特に、ターゲットとするユーザー層が若年層から中高年層へシフトする場合や、逆にミレニアル世代やZ世代といった新たな層を取り込みたい場合には、ブランドイメージやメッセージを刷新することが必要です。リブランディングを行うことで、変化したユーザー層に対してブランドの魅力を再度アピールし、新たな顧客層の獲得を目指せます。
市場や社会の変化も、リブランディングが必要になる重要な要因の一つです。テクノロジーの進化や消費者の価値観の変化、さらには法規制や環境問題など、企業を取り巻く外部環境が変わることで、従来のブランド戦略が通用しなくなることがあります。
例えば、サステナビリティが重視されるようになった現代では、環境に配慮した企業活動が求められるようになっています。このような社会的な変化に対応するために、リブランディングを通じてブランドの方向性を再設定し、社会的責任を果たす企業としてのイメージを確立することが重要です。
ブランドイメージと現実との間にズレが生じたときも、リブランディングを検討するべきタイミングです。企業が成長し続ける中で、ブランドが持つイメージと実際の製品やサービス、企業文化が一致しなくなることがあります。このような場合、消費者に対して誤ったメッセージを送り続けることになり、ブランドの信頼性や認知度に悪影響を及ぼす可能性があります。リブランディングを通じて、ブランドイメージを現実に合わせて更新することで、消費者との信頼関係を維持し、ブランド価値を向上させることができます。
リブランディングを成功させるためには、計画的かつ戦略的なアプローチが必要です。以下のポイントを押さえることで、リブランディングの成功率を高めることができます。
リブランディングを始める前に、自社の現状や抱える課題を徹底的に分析することが重要です。どの部分が消費者に受け入れられていないのか、どのような競争力が不足しているのかを理解することで、リブランディングの方向性を明確に定めることができます。
誤った認識のままリブランディングを進めると、期待した効果が得られず、さらに問題を悪化させる可能性があります。正確な分析を行うためには、社内のデータや顧客からのフィードバックを活用し、多角的な視点で検証することが求められます。
リブランディングの成功には、自社ブランドの強みや特徴を再確認し、それを最大限に活かすことが不可欠です。他社との差別化を図るためには、まず自社が何を得意としているのか、消費者がどの点を評価しているのかを把握することが必要です。その上で、これまでのブランドの良さを保ちつつ、新しい価値を提供できるような戦略を立てることが求められます。ブランドの強みを再定義し、それをリブランディングの中心に据えることで、消費者に強い印象を与えることができます。
リブランディングを成功させるためには、最終的な目的やコンセプトを明確にすることが不可欠です。目的が曖昧であったり、コンセプトが一貫していなかったりすると、リブランディングの過程で方向性がぶれてしまい、消費者に正確なメッセージを伝えることができなくなります。
リブランディングの初期段階で、ブランドが目指すべきゴールや、消費者にどのような印象を与えたいのかを明確に定め、それに基づいてすべての施策を展開していくことが成功への鍵となります。また、目的やコンセプトを社内で共有し、一貫性を持たせることも重要です。
リブランディングを成功させるためには、ターゲットとなる商品やサービスの価値を十分に見極めることが重要です。自社が抱えるブランドの価値はオンリーワンのものなので、他の会社が行ったリブランディングを真似したとしても上手くいくとは限りません。そのため、リブランディングを行うためには徹底した事前のマーケティングや戦略が必要となります。
しかし、この作業は簡単ではありません。ですので、場合によってはリブランディングを専門に行う業者に依頼するのも1つの方法です。下手に施策を行い評価を下げてしまわないようにするためにもリブランディングが得意な制作会社への依頼はおすすめです。