企業において、新しい顧客を獲得したい、今よりも企業価値を高めたい、といったケースにおいては、リブランディングが多く用いられています。リブランディングの例としては、ロゴマークの刷新やサービスの変更、商品パッケージの見直しなどさまざまな方法があります。
また、企業がリブランディングを行う理由としては、時代の変化にブランドを対応させるという目的もあります。企業が経営を行っていく上では、時代によって好調な時・不調な時があります。その中で、いつでも売れる・消費者から支持されるブランドであるためには、見直しが必要とされるケースもあるでしょう。場合によっては、企業の周年記念としてブランドイメージを一新する、ロゴの変更を行ってブランド力をより強化するケースも考えられます。
このように、企業がリブランディングを行うにあたってはそれぞれの理由があります。また、どのような方法でリブランディングを行うかも企業によって異なります。そこでこちらの記事では、大手企業がリブランディングを行った事例をご紹介します。どのような方法でリブランディングに取り組んだのかを確認していきましょう。
画像引用元:ヤンマー公式HP(https://www.yanmar.com/jp/)
2013年に創立100周年を迎えたヤンマーのリブランディングの事例をご紹介します。同社がリブランディングを行った理由は、地域によってバラバラだった企業イメージを統一するため。かなり昔から世界進出を行っている同社は、「デザインの力」を利用して世間に広くブランドイメージを発信し、より強いグローバルブランドを目指す目的がありました。
リブランディングを行う前の同社のイメージですが、日本を含むアジア圏においてはトラクターやコンバインなどをはじめとする農業機械の会社というイメージが圧倒的に強い状況でした。しかし欧米の場合は、農業機械で培ったエンジン技術を転用した、船のエンジン販売が主力事業。そのため、ヤンマーは高級船舶のエンジンを提供するメーカーとして高い評価を受けており、ラグジュアリーなイメージを持たれていました。
上記のように世界の地域によって異なっていたブランドイメージを統一するために、新しくブランドを象徴するシンボルマークがデザインされました。さらに、さまざまなデザイナーやクリエイティブディレクターを起用して、洗練されたデザイン・最新の技術を取り入れた製品を作ることでも認知度アップにつなげています。
画像引用元:ショウワノート株式会社公式HP(https://www.showa-note.co.jp)
「ジャポニカ学習帳」で知られるショウワノートの事例をご紹介します。同社は、商品のターゲットを子どもから大人に変更することによってリブランディングに成功しています。
子どもの頃に「ジャポニカ学習帳」を使っていた人も多いのでしょう。こちらのノートが発売されたのは1970年。そこからこれまでの累計販売数は14億冊以上という、多くの人に愛されてきたロングセラー商品です。しかし近年では少子化による影響で市場が縮小傾向にあるため、新たなターゲットの開拓が必要な状況となっていました。このような状況から、ショウワノートではコンセプトはそのままにして、大人向けの商品としてリブランディングに取り組みました。
同社の取り組みとしては、初めに2018年にリリースされた「愛されつづける名作シリーズ」が挙げられます。このシリーズでは、大人の女性向けとして「スヌーピー」や「ミッキーマウス」、「ムーミン」などのキャラクターが表紙となっています。さらに、単なるキャラクターグッズではなく、作者や作品の紹介に加えて名場面や名言も紹介するといったように、作品の魅力がわかる読み物ページも付属している点が特徴の商品です。
さらに、他の企業とのコラボレーションも行っており、たとえば文具卸業を展開するエムディーエスと「オトナジャポニカ」を販売。こちらの商品の場合、ジャポニカ学習帳のような知識は掲載していませんが、表紙を大人向けにデザインされている点が特徴。大人が持っていても違和感のない知的さと、さらにかつてジャポニカ学習帳を使っていた小学生の頃を思い出す懐かしさを併せ持った商品となっています。
このようにショウワノートのリブランディングでは、ターゲット変えた商品を作り出し、新たな活路を見出した事例といえるでしょう。
画像引用元:株式会社タニタ公式HP(https://www.tanita.co.jp/)
続いて、体重計や体脂肪計といった健康関連の測定機器を手がける株式会社タニタの事例を見ていきましょう。
現在は、タニタと聞くと「タニタ食堂」などのイメージから「健康」という印象が思い浮かぶ人が多いのではないでしょうか。しかし、同社がリブランディングの取り組みをスタートした2000年代の中ごろ以前は、あまりそのようなイメージを持っている人は多くなかったようです。
その理由としては、「体重計は頻繁に買い替えるものではない」という理由が大きかったといえるでしょう。体重計は多くの家庭で使ってはいるものの、どこのブランドのものを使っているかはあまり記憶に残らず、結果としてブランドの認知度も低い状態となっていました。
そこでタニタでは人々の健康づくりに貢献する、という目的を掲げてリブランディングに取り組みました。たとえばメディア戦略においては月に2本のペースで情報を配信して注目を集めました。さらに、レシピ本である「体脂肪計タニタの社員食堂」を発売したところ、これが大ベストセラーに。このレシピ本のヒットをきっかけとして、全国に「タニタ食堂」の出店も行っています。
そして同社では、大手食品メーカーなどとのコラボも実施。健康的なレシピを提供する企業であるというブランドイメージを作り上げることに成功しています。
画像引用元:スーパーホテル公式HP(https://www.superhotel.co.jp)
手ごろな宿泊料金と立地の良さが強みのスーパーホテルのリブランディング事例をご紹介します。同社は、上記に挙げたように「手ごろな価格・立地の良さ」を特徴としている一方で、「LOHAS(Lifestyle of Health and Sustainability)」を掲げ、エコ・ファースト企業に選出されるほどのこだわりを持ってホテルづくりを行っています。
しかし、スーパーホテルが持つこの2つの強みの間にギャップが生じていたことから、LOHASに関心が高いと思われる女性や若年層からの指示が得られない状況にありました。
スーパーホテルは売上も順調・顧客満足度も高かったものの、今後訪れると考えられるホテル市場の変化などに対応するために2018年からリブランディングに取り組みました。
若手社員主導で進められたこのプロジェクトは、まず経営層から顧客に至るまで幅広い層へのヒアリングを行うところからスタートし、サービスに不満を持っていたユーザーにもコンタクトを試みるなど徹底して行われました。その結果さまざまな意見が集められ、スーパーホテルのブランドが持つ強みや問題点の洗い出しが可能となり、その結果から「Natural Organic Smart」というコンセプトが導き出されました。
同社では、このコンセプトをもとにしてロゴの変更や館内サービスのシンプル化などに取り組み、ナチュラルかつスマートなデザインに変更。さらに社内ワークショップを開催し、課題を解決するための施策を社員で考え、実行に移してきました。
その後、2018年10月には「スーパーホテルPremier銀座」がオープン。その年の予約が埋まるといったように大盛況を博しました。また、他の店舗についても高い稼働率を維持するとともに女性や若年層を取り込みにつなげられています。
画像引用元:NTTドコモ公式HP(https://www.docomo.ne.jp)
NTTドコモでは、採用のリブランディングに取り組んでいます。
同社では、グループの再編が行われたことに伴って採用方針が変更されため、その変革について採用サイトのビジュアルで演出を行っています。
サイトの事業説明の部分では、3社の連携と新たな挑戦を3色の円を統合して表現し、採用フローの説明においては、2社が実施している段階的な選考について赤と青の階段を積み上げて表現しています。
そのほか、採用サイトは社員紹介インタビューや社員の対談、社内潜入動画なども掲載。就職活動を行う人にとって役に立つコンテンツが詰まった内容となっています。
1990年に多摩市にオープンしたサンリオピューロランドは、屋内型テーマパークとして非常に人気のある施設です。同施設では、オープンの翌年の1991年には来場者数がおよそ195万人となっていましたが、その後は来場者数が100万人台前半を推移。赤字経営が続いていたことから2014年よりリブランディングに取り組みました。
サンリオピューロランドのリブランディングでは、「ターゲットの見直し」が行われた点が大きな特徴とされています。これまでのターゲットは小さな子どもがいる家族連れとしていましたが、リブランディングによりターゲットを大人の女性に変更。子ども向けとして作られていた園内のアトラクションやミュージカルなどのコンテンツの見直しも行われました。
例としては、メインパレートを「大人可愛い」というコンセプトにする、レストランのメニューには「インスタ映え」するものを追加する、オールナイトイベントを開催するなどさまざまな取り組みを実施しています。
これらの取り組みの結果、2018年の年間来場者数は219万人まで増加。同施設のリブランディングは、ターゲットの見直しによって成功した事例といえます。
こちらの記事では、大企業におけるリブランディングの成功事例をご紹介してきました。リブランディングを行う上で重要なポイントはいくつかありますが、まずは自社の分析を行い、どのような課題を解決するべきなのかの把握が大切です。たとえば商品を改善するべきなのか、広告をリニューアルするべきなのか、メインとするターゲットを変更するべきなのかといった対策は課題によって異なるため、どのような課題があるか洗い出しを行うことが非常に重要であるといえるでしょう。
また、全てを刷新するのではなく、自社がすでに持っている強みを分析し、強化するのもポイントのひとつです。もともとユーザーが持つニーズに沿っているところは無理に変更する必要がないケースもあります。
このように、リブランディングを成功に導くためには、課題の洗い出しと時代の変化に応じたユーザーの需要を取り入れていくことが大切なポイントとなってきます。