アパレル業界ではさまざまなリブランディングが行われています。その目的としては、他のブランドとの差別化やロイヤル顧客の獲得などがあります。ロイヤル顧客とは、ブランドに愛着を持って何度も購入する顧客を指します。このような顧客を獲得することによって、ブランドの売り上げが安定するメリットがあります。
さらに、アパレル業界はファッションにお金をかけない低コスト思考が広がる一方、セレクトショップでの1点ものを選びたいと考える人もいるように二極化の傾向が見られるため、ブランドの立ち位置を決めることが重要になってきます。そこでこちらの記事では、アパレル業界におけるリブランディング事例をご紹介します。
画像引用元:ユニクロ公式オンラインストア(https://www.uniqlo.com/jp/ja/)
ユニクロは90年代に全国に向けて店舗を拡大していますが、当時はバブルが弾けて消費が落ち込み始めた時期です。このような状況にあったことも関連し、低価格路線だったユニクロが消費者のニーズにフィット。1998年には同社のフリースが大ヒットしています。
このようにユニクロは2000年代初めまで急成長を遂げてきましたが、その後それまでの低価格路線が裏目となってしまい、業績が低迷。これは低価格であるがゆえに同社の商品が広く普及したために、消費者から敬遠されてしまったことが原因と考えられています。
このような背景に加え、同社は世界進出を検討していたことから、ブランドイメージの刷新を決定。世界に対して「Made in Japan」ならではの強みをアピールするために、リブランディングが行われました。
このリブランディングに際して、クリエイティブディレクションには佐藤可士和氏が登用されています。ロゴマークの改変が行われ、英文字とカタカナのシンプルなデザインが新しく生まれました。こちらのデザインには、英文字・カタカナいずれもゴシック体のオリジナルなフォントを使用し、ブランドイメージの統一が図られています。このロゴは日本国内だけではなく世界に展開されているユニクロの店舗で使用されています。
上記に加えて、低価格というコンセプトは変えずに高品質・高性能な商品(エアリズムやヒートテックなど)もリリース。このようなリブランディングが行われたことにより、ユニクロはそれまで「低価格」のみだったイメージから「おしゃれで機能的な定番ブランド」として認知されるようになりました。
画像引用元:Tiffany & Co.公式HP(https://www.tiffany.co.jp)
「ティファニー」と聞くと、多くの人が思い浮かべるのは「ティファニーブルー」と呼ばれるブランドカラーなのではないでしょうか。このカラーが登場したのは、創業から8年後の1845年。やわらかさを感じさせる色合いのターコイズブルーであり、幸せを呼ぶと鳥といわれている「コマドリ」の卵が由来とされています。
ティファニーは、2021年にこの伝統的なブランドカラーとは別の色をブランドカラーとして取り込むことによって、若い層へアピールを行いました。まず、2021年4月1日にSNSで「ティファニーイエロー」と呼ばれるパッケージを発表。鮮やかな黄色の化粧箱の投稿には、SNSで40万以上の「いいね!」がついた一方、エイプリルフールの冗談だと思った人もいたようです。
しかしその後、ティファニーを「ルイヴィトンLVMH(モエ・ヘネシー・ルイヴィトン)」が買収して同社の傘下ブランドとなり、さらにティファニーからティファニーイエローの導入が正式に告知されました。加えて、ティファニーのビバリーヒルズ店では店内のイメージをイエローに刷新しています。
ちなみにティファニーイエローは、創業者であるチャールズ・ルイス・ティファニーが購入した「ティファニー・ダイヤモンド」が元になった色であり、伝統に裏打ちされた色といえます。このように、ティファニーでは伝統を受け継ぎながらも新たな変化を目指したリブランディングを行ったともいえるでしょう。
画像引用元:バーバリー公式HP(https://jp.burberry.com)
高級ファッションブランドのバーバリーもリブランディングを行うことにより新たな顧客層を獲得した事例として挙げられています。
1856年に設立されたバーバリーは、チェックパターンやトレンチコートで知られている老舗ブランドです。しかし、2000年代はじめになるとそのクラシックなスタイルや格式の高さにより、特に若い世代には響いていないという状況になってきました。そこで、伝統を尊重しながらも現代のファッショントレンドに適応することを目的としたリブランディングが行われています。
例えばブランドのロゴの刷新を行うとともに、より若々しくトレンドを押さえたコレクションを市場に投入しました。現代的な解釈で伝統的なチェックパターンを再度デザインする、新しいファッションアイテムを導入するなどの取り組みにより、若い層からも好評を得ています。さらに、バーバリーではこれまで行ってこなかったSNSによる情報発信に力を入れはじめました。このことで若い世代にリーチし、ブランドの現代的なイメージを強化。SNSに馴染みのある若い世代に向けてアプローチを行って、知名度を上げることに成功しています。
このようにリブランディングに取り組んだ結果、新たな層を獲得して売り上げを向上させ、ブランドの魅力を高めています。
画像引用元:ナイキ公式HP(https://www.nike.com/jp/)
スポーツウェアブランドのNIKEは1972年に米国で設立されていますが、もともと同社の前身はブルーリボンスポーツという会社でした。この会社は、日本のオニツカタイガー(現在のアシックス)の販売代理店でしたが、現在ではスポーツウェアブランドとして世界1位の売り上げを誇る人気ブランドに成長しています。
同社はさまざまな優れた商品を提供しているのはもちろんですが、そのマーケティング方法も成長に大きく関連しているといわれています。例えばNIKEといえば多くの人が思い浮かべる「スウィッシュ」と呼ばれるロゴは1971年に商標登録されたものですが、今もそのデザイン性が高く評価されています。
また、創業時よりトップアスリートに自社商品を使用してもらうエンドースメント契約に力を入れてきた点もNIKEの特徴。そしてシューズの売り上げを伸ばすために、ジョギングブームを巻き起こしたのも同社の戦略的PRといえるでしょう。
さらに、NIKEといえば「エア・ジョーダン」ですが、こちらはマイケル・ジョーダンと広告宣伝契約を結んで生まれたもの。しかしNBAの規約に反しており罰金を支払うことになりましたが、その騒動を逆手に取ったCM展開を行って大きなヒットを生み出しています。
画像引用元:ワコール公式HP(https://www.wacoal.jp)
ワコールは1946年に創業した衣料品メーカーです。主に女性用の下着を取り扱っており、品質の高さが特徴となっています。同社ではこれまでの歴史の中で蓄積してきた体型のデータを活用することによって実現した独自の設計に加えて高い縫製技術・厳しい品質管理によって、優れた品質の商品を提供しています。
また、同社ではさまざまなブランドを展開しているのも特徴のひとつ。メインブランドの「ワコール」や、「ウイング」「CW-X」などのブランドがあります。このように老舗のメーカーとして非常に知名度が高いワコールですが、下着は頻繁に購入するものではない点から、顧客との接点が少ないという課題を抱えていました。
この課題を解決するために、ワコールでは下着への関心を高めるオウンドメディアを開設しています。さらに会員制のWebサービスや、直営店で獲得できるポイントを管理するアプリなどにもコンテンツを配信し、顧客を育成するための施策を実施。また、Webの取り組みだけではなくリアルイベントも開催するなど、身近に感じられるような取り組みを行っています。
リブランディングでは、これまでのイメージを新たにして、その時代や顧客層の変化に合わせた再構築を目的として行われます。リブランディングを行うにあたっては、既存のブランドが持つ資産は活かし、より良くさせられる部分を変化させていくことがポイントのひとつとなってきます。いくら品質の良いアイテムを提供していたとしても、そのアイテムが時代と消費者のニーズに合っていなければ、ブランドの売り上げが伸び悩んでしまうこともあると考えられます。
このような変化に対応するには、時代に合ったブランド戦略の再構築が求められます。上記の事例でもご紹介しているように、これまで親しまれてきたブランドロゴを変更するなど大胆な変革が必要となる場合もあるでしょう。時代と消費者の変化を見越し、ブランドがどのような方向に進んでいくかを考えながらリブランディングを進めていくことが重要であるといえます。