このページでは、パッケージのデザインを考える上で無視することのできない法律について解説しています。企業として適切なコンプライアンスを前提としつつ、魅力的なパッケージデザインを制作できるよう、ぜひ参考としてご活用ください。
商品のパッケージをデザインする上で、意識しなければならない法律は少なくありません。加えて、特に食品は人体に直接影響するものであり、一層に食品表示法といった法律による定めが厳しくなっています。
そのため、食品パッケージのデザインをプランニングする際には、前提としてどのような法律を守らなければならないのか、また法律の定めにもとづいてどのような情報を表記しなければならないのかといった、基本的なルールを把握しておかなければなりません。
食品パッケージのデザインに法律違反となる問題があった場合、まずは商品の回収や販売停止といったリスクが考えられます。また単に食品表示基準を満たしていないだけであれば、行政から速やかな改善・是正が指示されるだけで済むかも知れませんが、指示を無視して販売を続ければ違反者に対して罰則が科されます。
特に食品表示法違反の罰則は罰金刑として1億円以下の定めがあり、さらに懲役刑まであり得るため、安易に考えることは非常に危険です。
また不適切な表示の仕方によって消費者が誤解して購入・飲食し、健康被害などが発生してしまった場合、企業の存続さえ危ぶまれることになるでしょう。
その他にも著作権侵害や不正競争防止法違反などによって、被害者から損害賠償請求訴訟を提起されるといったリスクもあります。
食品パッケージのデザインを考えていく上で、例えばイラストや写真といった画像と、商品名や説明文といった文章で、それぞれ対応する法律や考え方が変わる点にも注意してください。
例えば、他者のイラストを無断でコピーしたり、権利的に保護された写真などを無断で使用したりすれば、著作権法にもとづいて著作権侵害に当たります。
また故意か否かにかかわらず商標登録されている商品名を使用してしまえば、商標権を持つ人から損害賠償を請求されたり、医学的に根拠のない効果や効能を記載することで景品表示法や薬機法に違反したりといった恐れもあります。
食品パッケージのデザインを制作する際は、食品表示法の他にも複数の法律を意識して考えることが必要です。
ここでは、それらの中でも特に代表的なものをまとめましたので参考にしてください。
食品表示法は、消費者に対して食品の安全性を担保すると同時に、商品選択の機会を自由に与えて、公平な食品販売を叶えられるようにと定められている法律です。食品表示法は事業者にとっても消費者にとっても分かりやすい表示ルールを規定しており、食品の製造業者は必ず食品表示法の基準に則ってパッケージの表示内容や表示方法を決めなければなりません。
なお、食品表示法はさらに3つの法律へ分類することが可能です。
上記の各法律には、安全の確保や品質の維持、健康増進の基盤づくりといった立法趣旨が定められており、それらの基準に照らし合わせて表示すべき内容も決められています。
食品表示法で表記が義務づけられている項目は複数存在しますが、例えば主要な栄養成分について表示することも義務の1つです。記載対象の情報としては熱量やタンパク質、資質、炭水化物、そして食塩相当量などが必須項目になっており、その他にもビタミンや食物繊維といった任意の情報が存在します。
また、それぞれの熱量の単位や各成分の量を示す単位についても、適切なものを選択しなければなりません。
食物アレルギーは消費者にとって深刻な健康被害をもたらしかねない疾患の1つであり、当然ながら食品表示法でもアレルギー情報に関する表記が義務づけられています。
アレルギー情報については、まず特定原材料として「えび・かに・くるみ・小麦・そば・卵・乳・落花生(ピーナッツ)」が必須項目になっており、これらを含有したり関連したりしている場合は必ず表記して注意喚起を行わなければなりません。
また、この他にも可能な限り表記すべき対象として、アーモンドや大豆、ゼラチン、りんごといった20品目が指定されています。
保健機能食品や機能性表示食品の場合、その事実や関与成分、摂取に関しての注意事項などを記載します。なお、機能性表示食品は事前に消費者庁へ届け出て審査を受け、承認されていなければなりません。
景品表示法は「景表法」とも呼ばれ、その商品が正しく消費者に理解されて、健全な商取引を叶えるように、表示内容について守るべきルールを定めた法律です。
例えば、過剰に価値や品質が高いと誤解されるような表記や宣伝文、本来は使用されていない原料や素材が配合されているかのように錯覚される表現や演出といったものは、全て不適切な表示として景品表示法の違反になり得ます。
景品表示法としては、大きく優良誤認表示と有利誤認表示の2つを回避しなければなりません。
優良誤認とは、事実よりも過度に品質や価値が優れていると錯覚されるような表示や虚偽的表現を指します。例えば「世界最高の食材」や「究極の素材」といった根拠のない表現や、実際には天然素材を50%しか使っていないのに「100%天然」と表記するといったケースは、全て優良誤認の対象として規制される可能性があります。
有利誤認表示とは、事実をねじ曲げることで有利に見せかけ、お得だと誤解させるような表記を指すケースです。例えば、そもそも半値の価値しか想定していない商品を、あえて2倍の価格に設定した上で「半額」と表示して販売するといった「二重定価」は有利誤認表示に該当します。
著作権法や商標法は、個人や企業の知的財産権を保護するために定められている法律です。著作権はあらゆる「著作物」に対して、それが創作された時点で発生し、著作者に無断で他者が著作物を利用することは原則として認められません。
一方、商標法は「商標権」について定める権利です。商標権は、商品名やサービス名、あるいは商品ロゴなどを「商標」として登録することで発生する権利であり、商標権を持っている人は対象となる商標を独占的に利用することができます。
著作権侵害や商標権侵害は、一般的に大丈夫だろうと考えられる写真やイラスト、ロゴの使い方でも法的にNGとなるケースが多く、パッケージのデザインをする際には模倣やコピーなどを行わないよう徹底しなければなりません。
この他にも、工場で量産される商品の形状・造型などについて権利を認める意匠権といったものもあります。
例えば商標権や意匠権は商標登録・意匠登録を行って認められることで発生する権利です。一方、その申請には労力や費用がかかり、全ての人や企業が容易に登録手続きを行えるとは限りません。そこで、不正競争防止法が定める特定の条件下において、商標登録や意匠登録を行っていない人に対しても商標や意匠に対して使用を認めたり、あるいは販売を規制したりといった権限を与えることがあります。
不正競争防止法は不正な商取引を規制し、著作権法や商標法、意匠法などでカバーしきれない範囲にある人や企業の権利を守るための法律です。
食品表示については規定のルールがあるため、理解しておくことが大切です。著作権についてもオリジナルのデザインを制作するだけならそこまで難しくないかも知れませんが、ルールから逸脱してしまうリスクがあります。商標権や景品表示法が定める優良誤認表示といった項目については、デザイナーや制作者に悪気がなくとも違反したり権利侵害をしてしまったりする可能性があり、実際に個人で全てを意識しながらデザイニングすることは困難です。
そのため、法律やルールを適切に守れるプロへデザインを委託するといったことは、リスクマネジメントの観点からも価値のある考え方でしょう。