本記事では、サステナブルパッケージデザインにまつわる具体的な解説を行います。国内外の規制や素材のトレンド、先進事例をふまえながら、どのようにパッケージデザインを見直し、どのようなポイントに注意すればよいのかを解説します。
サステナブルパッケージデザインが注目を集める背景として、まず挙げられるのは国内外の環境規制や法整備の加速です。特にEUでは使い捨てプラスチック製品を禁止・制限する法案が次々と成立しており、ストローやカトラリーなどの使い捨て品が市場から姿を消しつつあります。日本でも2019年に「プラスチック資源循環戦略」が発表され、レジ袋の有料化やプラ新法といった法整備が進んできました。
これらの規制を前提に、企業が持続的に事業を行うためには、製品そのものだけでなく、製品を包装するパッケージに関しても環境や社会への負荷を減らすための取り組みが必要とされます。欧州を中心に拡大する「サーキュラー・エコノミー(循環型経済)」の動向は、日本企業にも大きな影響を与え、サステナブルパッケージへの移行がビジネス上避けられないテーマとなっています。
SDGsや環境報道を通じて、消費者は「モノを買うだけでなく、環境・社会にやさしい選択をしたい」という意識を高めています。商品そのものの原料や成分だけでなく、包装や流通方法にも目を向ける消費者が増えており、「プラスチック容器は環境に負荷が大きいのではないか」「紙素材なら本当にエコなのか」といった問いを持つようになりました。サステナブルなパッケージを採用することは、こうした消費者の期待に応えるだけでなく、ブランドイメージを高め、市場での差別化を図る手段にもなります。
サステナブルパッケージデザインを考える上では、ライフサイクル全体を通じて環境・社会への負荷を抑えることが重要です。国際的には、以下のような観点からデザイン・素材・仕組みを検討してみましょう。
サステナブルパッケージデザインにおいて、素材選定は要となる要素です。近年特に注目されている素材やアプローチを以下にまとめました。
シャンプーや洗剤などに使うボトルを紙で構成し、内面にコーティングを施すことで耐水性・耐油性を確保する試みが広がっています。プラスチックボトルと異なり紙製容器はリサイクルインフラが整っている点がメリットですが、コーティング部分が複合素材になる場合はリサイクルが難しくなるため、モノマテリアル化の工夫が必要です。
森林管理協議会(FSC)の基準を満たした認証紙を採用することで、過剰な森林伐採を防ぎながら紙パッケージを活用できます。紙素材の回帰が進む中で、森林破壊との関連性を回避するためにFSC認証は重要な指標とされています。
石油ではなく植物由来の原料を用いたプラスチックです。バイオ由来だからといって必ずしも生分解性があるわけではないため、混同に注意が必要です。サトウキビ由来のPE(ポリエチレン)などが代表例として挙げられます。
産業用堆肥施設(コンポスト)や特定の土壌・海洋条件で微生物により分解される特性を持つプラスチックです。PLA(ポリ乳酸)やPHBHなどが有名ですが、コストが高いことや耐熱性が低いことなど課題もあります。
飲料ボトルなどでボトルtoボトルリサイクルを促進する動きがあり、再生PETを用いた容器が増えつつあります。ヨーロッパでは再生PETを何%含有するかを義務化しようとする動きもあり、日本企業も対応が求められます。
消費者が使用後に回収されたプラスチックを原料とする、いわゆるPCR素材は、バージン素材の使用削減に寄与します。ただしリサイクル工程での品質やコストが課題です。
お菓子業界では、ファミリーパックの外袋を紙パッケージに変更する事例が増えています。海外ではスナック菓子やチョコレートの包装を紙素材にする動きが進展中です。紙へのシフトは、消費者にとって分別がしやすく、自治体のリサイクルインフラも活用しやすいのが利点ですが、バリア性や鮮度保持機能の確保といった技術課題が残ります。
欧米では、LOOPという容器回収プラットフォームが注目されています。ガラスやステンレス容器を使って商品を販売し、使用後に容器を回収・洗浄して再度詰め替えるサイクルを構築することで、ごみの排出を大幅に削減します。ただし回収インフラの構築や、消費者の協力が前提になるため、スムーズなサービス設計が求められます。
複数素材を組み合わせたパッケージは、見栄えや機能性に優れる一方で、リサイクル時に分別が難しいという課題があります。これを解決するため、一つの素材へと統一し、パッケージのほぼ全体を同じプラスチックや紙で構成する事例が増えています。たとえば、キャップとボトルを同じプラスチックにする、アルミフォイルを廃止してラミネート材を減らすなどの工夫が挙げられます。
消費者の環境・社会問題への関心が高まる中で、サステナブルな取り組みは企業や商品のイメージアップにつながります。
各国で使い捨てプラスチックの規制が進むなか、早めに対応することでリスクを低減し、市場競争力を確保できます。
初期投資こそ必要なケースが多いものの、リユースやリサイクルの仕組みが軌道に乗れば、資源コストや廃棄処理費用の削減が見込まれます。
サプライヤーや自治体、NPOなどと協力することで、新たなサービスやビジネスモデルを生み出すチャンスが増えます。
バイオマス素材や生分解性プラスチックは、依然として石油由来のプラスチックより割高です。大規模展開する場合のコスト負担が課題となります。
新素材の採用によって遮光性やバリア性など、製品保護機能が低下する可能性があり、実験や検証に時間と費用がかかる場合があります。
生分解性プラスチックやリユース容器などを導入するには、専用の回収インフラやコンポスト施設の整備が必要な場合があります。企業単独では難しく、自治体や他社との連携が不可欠です。
見かけだけ「エコ」を強調しながら実際には環境負荷があまり減っていない、いわゆる“グリーンウォッシング”が指摘される可能性があります。ライフサイクルアセスメントを通じて客観的な裏付けを示すことが大切です。
まず、自社のパッケージにおける使用素材やCO₂排出量、廃棄量などを把握し、削減目標やバイオマス素材の導入比率など具体的な指標を設定します。
パッケージの製造工程や流通ルート、使用後の回収プロセスまで視野に入れ、どの段階で環境負荷を軽減できるかを整理します。資材メーカー、物流企業、自治体などステークホルダーとの対話が重要です。
バイオプラスチックや紙素材、モノマテリアル化したパッケージなどを試作し、品質検証やユーザーテストを行います。段階的に導入範囲を拡大するケースも多いです。
単に環境配慮を追求するだけでなく、コスト負担や歩留まりの問題も考慮し、長期的に採算が合うモデルを設計します。自治体との共同回収や他社との連携がコスト抑制に繋がる場合があります。
サステナブルパッケージがどのように環境負荷を下げているのか、消費者にどういう分別行動を求めるのかなどを明確に発信します。例えば商品パッケージにQRコードを設置して、素材の詳細やリサイクル方法の動画説明ページにアクセスできる仕組みも有効です。
サステナブルパッケージデザインは、環境面だけでなく、ビジネスの持続性やブランド価値の向上にも深く関わる課題です。世界的な規制強化や消費者の意識変化を踏まえ、企業が取り組むべき優先度の高い施策のひとつと言えます。紙への置き換えやバイオマスプラスチックの導入、リユースシステムの構築など、多様なアプローチが模索される中で重要なのは、ライフサイクル全体の最適化と、ステークホルダーとの共創です。
単に素材を変えるだけでなく、回収・再利用の仕組みを構築し、企業や自治体、消費者が一緒に循環を支える体制を作ることが、真のサステナビリティ達成への近道となります。本記事で紹介した各種素材の特徴や事例、導入ステップなどを参考に、自社の商品特性や事業環境に合ったサステナブルパッケージを検討してみてください。強固なブランドイメージづくりや、中長期的なコスト最適化にも寄与することでしょう。
エモさを意識した環境に配慮したパッケージデザインを行うにしても、自社の力だけはスキルやノウハウが無くて、実現が難しいと感じることもあるでしょう。その場合には、パッケージデザインに特化したプロへの相談がおすすめです。
これまでの経験や知識をもとにサステナブルなパッケージデザインをサポートしてくれます。このサイトではパッケージデザインを行っている会社の紹介や、商品別におすすめの会社を紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。