食品パッケージのデザインを変えたり工夫したりすることで、既存の商品イメージを変更し、新しい価値を追求するリブランディングへとつなげられます。このページでは、食品パッケージデザインの制作のコツや、リブランディングのポイントなどを解説します。
パッケージデザインはプロモーションやリブランディングの戦略を支える大切な要素ですが、一方で食品パッケージの機能や存在意義を無視してデザイニングを行っても、商品としての価値を損なってしまう恐れが生じてしまうでしょう。そのため、食品パッケージのデザインを考える前に、まずは食品パッケージの役割や意味について理解しておかなければなりません。
パッケージが持つ大前提としての役割は、商品を包装して内容物を保護するというものです。特に食品は衛生面の配慮が不可欠な商品であり、中身が空気や異物に触れて汚れないように保護することはもちろん、保管している間に内部のカビや腐食を遅らせたり、小分けする際に利便性を高めたりと、パッケージには色々な意味が存在しています。
パッケージに描かれているデザインは、実際に商品を手に取る前から、真っ先に視界へ飛び込んでくるものであり、消費者へ商品のイメージを訴えかける手段になります。また、例えば商品パッケージのデザインやイラストに人気のイラストレーターやアーティストを起用していたり、イメージキャラクターとして有名人を採用していたりすることで、食品に対する印象に加えてパッケージが持つプラスイメージをアピールすることが可能です。
パッケージに表示されている成分や法的に定められている記述はもちろん、企業としてどれだけ食品の安全性に配慮し、誠実な商品作りに取り組んでいるか、姿勢や熱意を伝えるためのツールとしてもパッケージは活用されます。
視覚的な効果だけでなく、例えば商品を包むパッケージの素材に配慮することで、さらに多方面の価値を提供したり、想いを伝えたりできることも重要です。
食品パッケージのデザインを考えるときに、商品パッケージとして欠かすことのできない要素は少なくありません。そのため、食品パッケージデザインを制作する際は、必要な情報を漏らすことなく掲示しながら、全体のコーディネートを考えていくことが大切です。
そこで食品パッケージデザインの基本として、パッケージに盛り込むべき要素をまとめました。
当然ながら、商品名や商品ロゴをパッケージに記載することはプロモーションの基本です。実際、どれほど見た目に印象的な食品パッケージのデザインを思いついたとしても、それが一体どんな商品で何という名前なのか見ただけで分からなければ、宣伝効果が半減してしまいますし、消費者の利便性も損ねてしまいます。
もちろん、すでに十分なブランディングに成功しており、あるいは限定的な場所のみで販売される特殊な商品などであれば、あえて商品名を掲載しないというデザイニングも可能です。しかし、それはリスキーなため、消費者に商品を選んでもらうのでなく、商品の側が消費者を選んでいるという状態だと理解しなければなりません。
どのような商品であるのか、訴求力のあるコピーや文章を工夫することも大切です。例えば美味しさを表現する擬音語や、「無農薬」や「オーガニック」、「農家の手作り」といった信頼性や誠実性をアピールするような用語も有効です。
その他、商品説明として背景情報や制作過程を分かりやすく表示するといった方法も効果的でしょう。
その商品が誰によって製造・販売されているのか、企業名や企業情報などを明記することも必要です。また、企業としてすでに知名度を獲得しているロゴやマークといったものがあれば、それを取り入れたデザインを検討することもできます。
シズル感とは、広告業界などで使われる用語であり、「みずみずしさ」や「新鮮さ」、あるいは「香り立つような美味しさ」などを想起させる表現や演出を意味します。
せっかく食品の写真やイラストを掲載したのに、それが「美味しそう」だと感じられないような写り方や描かれ方をしていれば、商品パッケージとして宣伝効果を発揮できません。
内容物について分かりやすく表現しつつ、シズル感のある写真やイラストをデザインすることが肝要です。
食品パッケージにおいて、食品表示や成分表示といった法的に定められている内容を削除することはできません。表示方法や表記方法は法律によって規定されているため、必ず必要な条件を確認してください。
商品を市場へ流通させて販売するためには、商品情報を登録したJANコードを表記することも必要です。なお、JANコードは情報が読み取れる状態であれば、一部をデザインとして工夫することもできます。
これまでの内容を踏まえた上で、実際に食品パッケージのデザインを考えていく際のコツやポイントを解説しますので、自分なりに考えながら工夫する材料としてご活用ください。
パッケージのデザインに限らず食品や商品を企画・考案して製造する上で、どのようなコンセプトにもとづいて商品化をプランニングし、どのようなターゲット層を消費者として狙っていくのか、前提となるベース情報を決定しておかなければなりません。
コンセプトやターゲティングが明確化されているからこそ、それらを土台としてデザインの方向性やプロモーション戦略を考え始められます。
コンセプトやターゲットを明確化したとして、具体的にどのような魅力や特徴が商品にあるのか、正しく把握しなければなりません。
商品が持つ特徴をデザインによって魅力を演出し、商品の個性や独自性を強みとして表現する方法を考えることが、食品パッケージデザインを制作する工程で無視することのできないポイントになります。なお、仮にマイナスイメージを持たれるような要素であっても、表現方法やコピーを工夫することで、むしろプラスの印象へ転換できる可能性もあるでしょう。
市場へ流通させて商品を販売・展開する場合、販路や流通、あるいは販売される場所や販売形態なども考慮してデザインをすることが基本です。
デザインの見やすさはもちろん、パッケージのサイズや持ちやすさ、開封しやすさといった面を多角的に考慮することで、「食品」という1つのアイテムとして成立させられるようになります。
企業として力を入れている商品や食品であるほど、伝えたい情報や届けたい想いが多くなりすぎて、1つのパッケージデザインへ収まりきらないといったケースは少なくありません。
しかしあまりにも情報過多なパッケージでは、必要な情報を優先的に届けることができず、結果的に伝えるべき情報やコンセプトが消費者へ伝わらないままといった結果になりかねません。
そのため、法律による規定は当然として、商品を販売する上で本当に伝えたいこと、特に重視すべき情報やテーマなどをきちんと取捨選択した上で、さらに優先順位を設定することが肝心です。
また、仮に文字だけでは伝えきれない内容であっても、写真やイラストなどを使えば一目で伝えられる可能性はあります。
パッケージデザインの失敗例としてありがちなものが、パソコン画面上で見た時には素敵なデザインだったのに、いざ商品パッケージとして印刷・制作してみると、おいしくなさそうになってしまったり、良く感じられなくなってしまったりするケースです。
そもそもパソコンのモニターやスマホの画面に表示されている色と、インクによって印刷・再現される色は、必ずしも同じものになりません。またモニター表示も個々の設定によって再現性が変わり、屋外や室内照明といった要素でも色味は変わります。
加えて、パッケージの素材や表面加工などによっても色の再現度や見え方は変わるため、必ず試作を用意してデザインの再現度を追求することが必要です。
食品パッケージデザインを制作する上で注意すべき点やコツ、パッケージの完成度を追求する方法を解説してきましたが、現実問題として全ての要素を理想通りに実現しようと思っても、十分なスキルやノウハウを備えたプロでなければ困難です。
そのため、自社の取り組みとして食品パッケージのデザインを工夫することは良いですが、難しいと感じた場合にはプロに相談してアドバイスをもらうことも立派な「コツ」といえるでしょう。