ジッパー加工・ミシン加工の基本からパッケージデザインに採用する際の注意点までを解説しています。
「ミシン目」とは、切り取りや折り曲げをしやすいよう、紙やパッケージに点線状の切れ込みを入れる加工を指します。具体的には、切断されている部分と繋がっている部分が交互になるように配置し、ハサミを使わなくても手でビリビリと破りやすくするための仕組みです。
例として、回数券や映画のチケット、商品チラシに付属するクーポン、またはがき付きのチラシやティッシュ箱の取り出し口などに、ミシン目がよく使われています。
ひとくちにミシン目と言っても、実は「切りやすさ」「破れやすさ」の度合いを調整する技術が必要です。紙の厚さや材質、表面加工の有無などが変わると、ミシン目の使い勝手は大きく変化します。
切り取ることが主目的の場合、ある程度は破れやすい設定にする必要があります。クーポンやチケットなら、誰もが簡単にピリッと切り離せると便利です。
折り曲げやすさを目的とするミシン目もあります。たとえば「リード罫」は、短い切り込みと短い折り筋が交互になっている加工です。普通の折り筋よりも紙をよりスムーズに折れるよう設計するものなので、「切り取るため」ではなく「折るためのミシン目」として活用されるケースがあります。
一方でパッケージのジッパー加工は、紙に「への字」や「矢羽」のような連続的な切れ込みを入れて“パリパリ”と開封できるようにする技術です。
お菓子の箱や宅配ピザの箱などでもよく見かけられ、ミシン目の一種とまとめられることもありますが、正式には「ジッパー刃」「ジッパー加工」という名称で区別されることが多いです。
ダブルジッパーは、よりなめらかに開封できて切り口もきれいになる傾向があります。そのため、お菓子や郵便物の開封口などで重宝されることが多いです。
ミシン目・ジッパーは「手軽に開けられる」「未開封の証明になる」など、消費者の利便性と安心を両立するために考案された工夫です。
ただし、紙の厚さや素材、表面加工などをしっかり考慮しないと、「破れにくい・破れやすい」などのトラブルが起こりやすい点が大きな特徴です。次のセクションでは、具体的な加工方法や注意点をより詳しくご紹介します。
パッケージの形を切り抜くとともに、ミシン目や折り筋を入れる工程として一般的なのが「トムソン加工」です。
ミシン刃は「カット(切れている部分)」「アンカット(繋がっている部分)」の長さの組み合わせで種類が分かれます。たとえば「2×1ミシン」は、2mmカット→1mmアンカットを繰り返す仕様です。ピッチが短いほど破れやすい代わりに強度が下がり、長いほど破れにくいけれど切りにくい、というトレードオフがあります。
ミシン目が強すぎる(切れやす過ぎる)と、輸送時の振動などで破損リスクが高まります。逆に弱すぎる(切りにくい)と、開封時に消費者が苦労してしまいます。紙本来の厚みや表面加工と合わせて、実際にサンプルを確認しながら適切なピッチを選ぶのがおすすめです。
紙には繊維が流れている方向(目なり)があります。ミシン目やジッパーを入れる向きとの関係で、途中で紙が斜めに裂けるなどの不具合が発生することもあります。形状の都合で目なりが垂直になる場合、刃のピッチを細かくするなどして調整が必要です。
「ここから開けてください」と矢印や「キリトリ線」と印刷する位置と、実際のミシン刃の位置をしっかり合わせないと、うまく開けられなくなってしまいます。図面・印刷・抜型をすり合わせる工程がとても大切です。
PP貼り(フィルムラミネート)やUVニスが施されていると、紙がコーティングされて強度が高まり、簡単には破れなくなる場合があります。厚紙かつPP貼りのような仕様だと、ピッチを短くしたりダブルジッパーを採用したりと、複合的な工夫が必要です。
ジッパー加工部分がデザインとどのように融合するかも大切です。パッケージ全体のビジュアルやブランドイメージを損なわず、なおかつ機能的な加工が実現されるよう、デザイナーと加工技術者との綿密な連携が求められます。
グラフィックの配置や色使いが、ジッパーの切り取りやすさに影響を及ぼさないよう注意が必要です。加工部分にあえて目立たせたい場合でも、商品保護や安定性とのバランスを見失わないよう意識しましょう。
ミシン目やジッパー加工では、紙の特徴・ピッチの設定・表面加工などを総合的に考える必要があります。ほんの少しのバランスで「開けにくい」「輸送中に破けてしまう」などの問題が起こります。矢印や「開け口→」の向きがずれるとユーザーを迷わせるなど、基本的なところほど注意が必要です。
パッケージのデザインにジッパー加工を用いる場合には、下記のポイントを意識しましょう。
ジッパーは切れ込みが折れ曲がっている方向から開ける仕組みです。印刷で「こちら側から開封」と示すときは、必ず実際の切れ目方向と合致しているかチェックしてください。
ジッパー刃が二列必要になるため、抜型コストや加工費が増えがちです。ただし、開封時のスムーズさやきれいな断面を優先するなら、ダブルジッパーの価値があります。
ジッパーで箱を開けて、そのままフタを折り返して店頭POPにするデザインも多いです。1つの箱が輸送箱と販促ツールを兼ねられるため、組み立てやすさとの両立を意識した設計が重要です。
たとえば「3個1セット」になっている湿気取り剤を、シュリンクフィルムではなく紙ケースでまとめるケースがあります。
裏面にダブルジッパーやダブルミシンが組み込まれていて、一つずつ切り離すのも簡単。ダブルミシンによって「破り口が整っていて、紙ケースがフタにもなる」というメリットが生まれ、開封後の使い勝手も向上します。
化粧品の箱は、表の3面に必要表示を載せ、追加の説明書きは箱の内側に印刷しておくという事例があります。
ミシン目で糊付け部分を切り開けると、中面の詳しい案内を読める仕組みです。別紙の説明書を削減でき、箱を開いて読むだけなので、資源やコストを節約しつつ利用者も楽になります。
小型のメール便ケースにジッパーが付いていて、受取側がカッター不要で開けられる仕様になっている事例です。「本やカタログを安全に包む・保護する」+「開けやすい」という両立が評価され、需要が高まっています。
カタログや冊子を郵送する際などに使われる厚紙封筒で、開封用にダブルジッパーが採用されることがあります。受け取った相手が余計な破れを起こさずにスムーズに中身を取り出せると、企業のイメージアップにもつながります。
最後に、ミシン目やジッパー加工とSDGsとの結びつき、さらに今後の方向性について解説します。
近年は「プラスチックを減らして紙包装へ移行しよう」という流れが加速しています。そこで、以下のような観点でSDGsにも貢献できます。
こうした需要増に伴い、ミシン・ジッパー技術のニーズもさらに高まると予想されます。再生紙やバイオマス由来のフィルムなど、環境負荷を下げる素材との組み合わせも注目ポイントです。
ゼリー飲料やサプリメントなどを機械で自動箱詰めするとき、ワンタッチで組み立てられるリード罫とミシン目の組合せが活躍します。製造ラインに問題なく適合するかどうか、事前に抜型を試作してチェックすることをおすすめします。
パッケージはユーザーが最初に出会う「商品の顔」です。ここが破れやすい、開けにくいなどだとマイナスイメージになりかねません。逆に開けやすく捨てやすい箱は、ブランド好感度にも貢献します。
ダブルジッパーなど凝った仕様は加工コストが上がりがちですが、商品のイメージアップや使い勝手を良くする投資と考えることで差別化につながります。商品単価や用途を踏まえ、「どこまで機能性を追求するか」を検討しましょう。
ミシン目やジッパー加工について、基本的な仕組み・注意点・活用事例や未来の展望をご紹介してきました。最終的に注目したいのは次の3点です。
パッケージの見た目だけでなく、ミシン目やジッパーなどの使いやすさをしっかり吟味することで、消費者の満足度やブランド価値の向上につながります。
開ける瞬間の“気持ちよさ”や“分別のしやすさ”を重視すれば、サステナブルな取り組みと合わせて多方面のメリットを得られるでしょう。
今後はさらに、環境負荷の低い紙やフィルムの登場に伴い、「開けやすさ」×「環境配慮」×「ブランド魅力」の三拍子を満たすパッケージ設計が期待されています。
ミシン目やジッパー加工を活かしたパッケージデザインは、見た目の美しさと機能性のバランスが求められるため、専門的な知識や経験が必要です。「どこに切れ目を入れるか」「どのピッチが最適か」など悩む場合は、パッケージデザイン会社への依頼も一つの手段です。プロに相談することで、自社の要望に沿った最適な設計を提案してもらえるだけでなく、過去の実績に基づいた具体的なアドバイスも受けられます。